日本心臓リハビリテーション学会ステートメント
ー 日本心臓リハビリテーション学会の使命 ー
日本心臓リハビリテーション学会の使命
日本心臓リハビリテーション学会は、先進的心血管治療および予防介入としての心臓リハビリテーションをわが国において広範に普及させるとともに、その質の向上を図り、ひいては心血管疾患患者のQOLと長期予後を改善し、もって国民の健康福祉に寄与することをめざします。この目的を達成するために、本学会は心臓リハビリテーションに関わる学術研究の振興・発展を図り、会員の教育・研修・交流を通じて人材の育成に努め、国内および海外の関連団体と連携・協働し、市民・医療関係者・社会一般への情報発信・啓発・提言などの活動を行います。
日本心臓リハビリテーション学会の成り立ち
日本心臓リハビリテーション学会は、「心臓リハビリテーション研究会」を前身として1995年に設立されました。会員は、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師・管理栄養士・臨床心理士・健康運動指導士・研究者など多職種からなり、会員数は創設以来増加を続け、2021年7月現在約15,000人に到達しています。
心臓リハビリテーションの定義
心臓リハビリテーションとは、心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現することをめざして、個々の患者の「医学的評価・運動処方に基づく運動療法・冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療」を多職種チームが協調して実践する長期にわたる多面的・包括的プログラムをさします。
心臓リハビリテーションの歴史
欧米では1960年代に急性心筋梗塞患者に対する入院中の心臓リハビリテーションが始まりましたが、当時の目的は、長期安静臥床により生じた身体デコンディショニング(運動耐容能低下・心拍血圧調節異常・骨格筋廃用性萎縮・骨粗鬆症などの身体機能調節障害)を是正し、運動耐容能を向上させ、退院・社会復帰を早めることであり、心臓リハビリテーションは「早期離床と社会復帰をめざす機能回復訓練」でした。しかしその後、虚血性心疾患や慢性心不全患者を対象として退院後に外来で実施される包括的心臓リハビリテーションプログラムが、運動耐容能のみならず冠危険因子・生活の質(QOL)・長期予後を改善する効果を有することが明らかにされ、心臓リハビリテーションの概念が「QOLと長期予後の改善をめざす疾病管理プログラム」あるいは「循環器病予防介入」へと大きく変化しました。
診療ガイドラインにおける心臓リハビリテーションの位置づけ
日本心臓リハビリテーション学会は、先進的心血管治療および予防介入としての心臓リハビリテーションをわが国において広範に普及させるとともに、その質の向上を図り、ひいては心血管疾患患者のQOLと長期予後を改善し、もって国民の健康福祉に寄与することをめざします。この目的を達成するために、本学会は心臓リハビリテーションに関わる学術研究の振興・発展を図り、会員の教育・研修・交流を通じて人材の育成に努め、国内および海外の関連団体と連携・協働し、市民・医療関係者・社会一般への情報発信・啓発・提言などの活動を行います。
わが国における心臓リハビリテーションの現状
心臓リハビリテーションの有効性の豊富なエビデンスおよびガイドラインにおける強力な推奨にもかかわらず、わが国における心臓リハビリテーションの普及は欧米に比べて大幅に遅れています。特に退院後の外来心臓リハビリテーションの普及が遅れており、心血管疾患患者の在院日数が急速に短縮する中で、早期退院後の外来での受け皿が未整備の状態です。さらに心臓リハビリテーションの社会的認知度は、脳血管疾患や運動器リハビリテーションに比べて格段に低いことが示されています。本学会は、心臓リハビリテーションに関する臨床エビデンスと現実との大きなギャップを解消し、冒頭に掲げた目標を達成するために邁進します。
2013年1月25日理事会承認
2015年4月30日更新
2021年12月22日更新